高校時代の3年間の殆どを過ごしたのが音楽室、そう「軽音楽部」の部室だ。ジメジメして、真夏はクソ暑く全員汗だく、冬は寒くて寒くて、手袋して練習したいくらいの部屋。
でもたくさんの思い出が詰まった、かけがえのない場所。忘れられない部屋。
入学して何日目かに
「新入生歓迎コンサート」
というのが行われる事を知り、古い校舎の一番の突き当りにあるその音楽室へ向かった。
「へ〜こんなところで演奏するんだ。どんなバンドなんだろう?」
と興味津々で始まりを待つ。しかしビックリ。大勢の演奏者用の椅子が、ステージ上狭しとばかりに置いてある?
「え?ビッグバンド??」
中学時代はロックやらパンクやらばかり演奏しつつも、タモリの「今夜は最高」(笑)などで演奏される曲を聴いて、ジャズっぽいものにも興味一杯だったからか、心がなんだかわくわくする。ビッグバンドなんてそれまで生で聴いた事がなかったから・・
始まる。凄かった。圧倒される。ジャズ、ロック、フュージョン、ラテン、そして聖子ちゃん!!
完璧なブラス・アレンジにグルーヴするリズム、それに、アドリブ・・
15歳のロック坊やにはすべてが刺激的。驚き。憧れ。バンドの人というより
「音楽家」 笑
「自分とたいして年の離れていない人たちがこんな凄い演奏をしている!!俺も音楽家になりたい!!」
翌日入部した。
練習は厳しかった。徹底的にやった。気が狂うほど、毎日練習した。
いい演奏するために当然なのだが、どうしてここまで?と、特に文化祭やその他の演奏会の前は徹底的にやった。毎日音楽室にしかいなかった。
面白いことに、昼休み、先輩たちが毎日「理論」を丁寧に教えてくれるのだ。これが素晴らしい!音楽関係の専門学校で最初に教えてくれるような内容で、コード、スケール、ヴォイッシングなどを教えてくれた。音楽室は音楽教室でもあった。
またOB、ほとんどがその後も大学などで、ビッグバンドを演っているバリバリのプレイヤーがしょっちゅう指導しに来てくれた。ジャズドラマーとして有名な
「つの犬」さん
とセッションしたり、少しは上手くなったつもりの高校生に、
「まだまだ頑張りなさい!」
「いろんな音楽を聴きなさい!」
なんていう、刺激を多いに与えてくれた。
なかでもMさんという素晴らしい先輩がいた。4歳上の先輩で、厳しいコンダクトでいつもいつも、指導してくれた。
酒も好きで、文化祭の後など、わざわざ家に呼んでくれて、みんなで打ち上げ。そこで多くのOBと繋がり、多くの知らなかったヤバイ世界を知り(笑)、いろいろな音楽を教えてもらい、なんたって当時の高校生にしてみれば、家にあんなに楽器があって、ミキサーやらなんやかんや作曲セットがバッチシあって、機械がいっぱいあって、、、そういうことでもうわくわくしてしまうもの。そこでMさんは
「音楽はいいだろう!カッコ良いだろう!いつまでも続けるんだぜ!!」
と無言のメッセージをいつも発していてくれた。
卒業後もなにかと気にかけてもらい
「オ〜ウ!まだ演っているのか!!ライブ教えてくれよ!いくからさあ!後さ、たまには後輩に指導してやってくれよ。」
Mさんは俺たちが卒業した後も、ずっとずっと音楽室で後輩を指導している。
素晴らしいことだ。
音楽の素晴らしさ、楽しさを多くの人に伝えている。そのことで、多くの人々を繋げている。本当に音楽を愛している人だ。素敵な人だ。
そのMさんが2日に病気で亡くなった。
「嘘だろ!!!!だって10月のライブの告知してたよ?まだつい最近だろう??」
訳がわからなかった。まだ40ではないか!!今でもまだ、なんなんだかわからない、、という気持ち。哀しくてしょうがない。
今はただ、Mさんが教えてくれた。
「音楽っていいぜ!音楽っていろんな人と繋がるんだ!!な、続けろよ!!!」
その言葉に恥ずかしくねえように、生きていかなきゃな、、、と思う。
同期や先輩と昨日、今日と連絡して話をしていたら
「新入生歓迎コンサート」
でコンダクトをしていたMさんの背中を急に思い出した。
またあの音楽室に行ってみようかな、と思った。多分、絶対、あの人の音が残っている、そんな気がするんだけれどね。
最後の別れは、あの「音楽室」でしたいんだな、やっぱり。