「
ジョン・ヒックス」が好きで好きでたまらない。最高のサックスマン、「
デヴィッド・マレイ」の代表作には必ず参加している、「美しさと激しさ」を共有するピアニスト。
マレイとの演奏でも分かるが、激情系サックスのバックで演奏すると、とんでもないカッコ良いピアノを弾く。
ということで今夜はこの2枚。
御大ハミエットの強烈ライブ盤「Bearer Of The Holy Flame」とこれまた御大ファラオのこれまたライブ「Live」。とにかくこの2枚のヒックスは凄い!いかれちゃっている!。
ハミエットはショーターの名曲中の名曲「フットプリンツ」をしょっぱなにもってきているんだけれど、この曲のヒックスのソロがもうヤバヤバ。完全に常人の考える「激しいジャズ」「美しいジャズ」をはるかに超えまくっている。美の神が乗り移っている。このヒックスを聴いて体が揺れないのならば、ジャズとは縁が無かったんだ、と諦めるのが正しい、それくらい本当の「スウィング」。ピアノの全ての音域が唄っているのである。滝のように激しく連打するコード、川面でキラキラと光るような美しいパッセージ、絶望の中で発見した光を敬うかのような優しいアルペジオ、そして万策尽きて力果てた時の高音メッタ打ち・・・もう完璧である。
狂人ファラオのライブもしょっぱなが凄い。ファラオの代表ナンバー「You've Got To Have Freedom」。荒れ狂うファラオと静止するなどもっての他、もっともっと狂わせる恐ろしいまでに、今ここで死んだっていいんだよ、と云わんばかりの激情ピアノ。だからこそ極上の美しさを見せる。音楽家がやることの最高のことは、もっとも激しく、もっとも死に近づくくらい極限に達した時、どんな美しさを見せられるかである。俺にとってジョン・ヒックスはそういう意味で完璧な音楽家。
ヒックスの名曲に「アフター・ザ・モーニング」という曲がある。おそらくジャズ史の中でもイチニを争う優しいバラッドだ。許されぬ夜を共にしてしまった間柄の、その、翌朝の風景、であろう。
ちなみに近いのはドン・プーレンであり、今聴くならD.D.ジャクソン。結局エリントン〜ミンガスの流れが一番好きなのね〜。そのプーレンに捧げたD.D.とハミエットのデュオ「For Don」は世界一優しいデュオです。