この時期になると、いつも思い出す風景がある。
小学生時分の夏休み、である。
小学校は3つ行って、今日ちょいと考えてみたら、夏休みは4、5カ所で過ごしたみたい。まあ、みたい、って曖昧だけど。
で、すごく明確に覚えているのは、多摩は府中に居た頃だろうが、狂ったように鳴く蝉地獄の中で、弟や友達と真っ黒になって遊んで、家に帰ってくると、決まって聞こえてくる、
「宿題は!ドリルは!!」
という親の声の激しさ。仕方なく、夕涼みの時間帯、蚊取線香のいい匂い漂う中、茹でたてのトウモロコシを頬張りながら、テーブルに片ヒジついて書いていた読書感想文。ミニカーで俺の勉強を横から邪魔する弟、庭の緑の向こうから聞こえてくるヒグラシの「カナカナカナカナカナカナカナカナカナ・・・・・」
今になってみると本当に素敵な時間、だね。真夏の、夏休みの思い出だ。
頬張るトウモロコシが、ポテトチップスに変わってきた頃、少年は若者に変わってきた。弟の代わりに、隣でキャキャ云う女子の「色」に感想文どころではなくなって行く。地域の夏祭りで出会ってしまった、いつものクラスメイトの、いつもとは違う妖艶な姿に子供心ながら、興奮した、蒼い時代。ワッハッハッッハッハハ。
学生時代、俺は理数系はまっったく〜〜といっていいくらい苦手だが、国語とか社会は妙に好きな子供だった。きっとそれって、小学時分の読書感想文の宿題のおかげだろうね。
「良寛」「家康」「野口英世」・・・
懐かしい真夏の夕方の匂いと色あせた図書室の本の匂い。
などと考えながら、いろいろ本読んでいる。もちろん、隣には弟はいないし、トウモロコシも茹でないし、だいたいパソコンなどというものがある。文章を書くことイコールキーを叩く、ということになっておる。それでも蝉は鳴いているし、暑さは25年前と変わらない。夏は夏だ。
夏は夏だ。夏の終わりは最初から分かっていても、夏、真夏。
読書感想文は、もうコクヨの原稿用紙には書けないけれど、いつまでも変わらない夏の思いもあるもんだと、ちょいと考えた夜。転校生を繰り返した俺は故郷も地元も、どこにおいていいのか、それを結局曖昧に生きてきた。別に構わないことだが、ほんの少し少年時代の夏休みを思い出したら逆に、
「なんだ〜!全部故郷じゃん!」
と強引に納得。
もう少し全部楽に夏しましょう。ワンワン。